2020年に全面施行された「改正健康増進法」を受け、全国各地の自治体でも独自の「受動喫煙防止条例」が制定されています。飲食店やオフィス、商業施設などの管理者は、国の法律だけでなく、各自治体の条例にも適合した喫煙環境を整備する必要があります。
しかし、「国の法律と条例は何が違うのか」「自分の店ではどこまで対策が必要なのか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。基準を満たしていない喫煙所は、行政指導や罰則の対象となるだけでなく、利用者からのクレームリスクも高まります。
本記事では、受動喫煙防止条例の基本から、飲食店や施設に求められる具体的な対応、そして基準をクリアするための喫煙室の要件について整理して解説します。

受動喫煙防止条例の基本
受動喫煙防止条例は、国の改正健康増進法をベースとしつつ、各自治体が地域の実情に合わせて独自に上乗せしたルールです。まずはその目的と基本的な仕組みを理解しましょう。
条例の目的と対象範囲
条例の最大の目的は、望まない受動喫煙をなくし、地域住民の健康を守ることです。対象となる施設は、飲食店、オフィス、工場、ホテル、商業施設、学校、病院、行政機関など多岐にわたります。特に東京都や大阪府などの条例では、国の法律よりも厳しい規制が設けられている場合があります。例えば、従業員を雇用している飲食店は原則屋内禁煙とするなど、より踏み込んだ内容になっていることが多いため、必ず管轄の自治体のルールを確認する必要があります。
罰則や行政指導
条例に違反した場合、保健所等の行政機関による指導や勧告が行われます。
改善が見られない場合や悪質なケースでは、命令が出され、最終的には過料(罰金)が科せられる可能性があります。また、違反施設として公表されるリスクもあり、社会的信用の低下にもつながりかねません。
飲食店が求められる対応
多くの飲食店経営者にとって、喫煙ルールの変更は大きな課題です。条例によって求められる義務は、店舗の規模や形態によって異なります。
禁煙・喫煙可能の条件
原則として、飲食店の屋内は「禁煙」です。喫煙を認める場合は、基準を満たした「喫煙専用室」などを設置する必要があります。
ただし、以下の条件をすべて満たす既存の小規模飲食店(既存特定飲食提供施設)に限り、経過措置として、飲食しながら喫煙できる「喫煙可能室」の設置が認められています。
- 2020年4月1日時点で営業していること
- 客席面積が100㎡以下であること
- 資本金または出資の総額が5,000万円以下であること
※東京都など一部の自治体では、「従業員を雇用していないこと」という厳しい追加条件があるため注意が必要です。条件を満たさない場合は、原則通り喫煙専用室(飲食不可)を設けるか、屋内完全禁煙にする必要があります。
標識・掲示ルール
喫煙室を設置した場合、または喫煙可能店とする場合は、その旨を示す標識(ステッカー等)を掲示する義務があります。
- 施設の主たる出入口:
店内に喫煙場所があることが分かる標識。 - 喫煙室の出入口:
喫煙室の種類(専用室、加熱式専用、可能室)や、20歳未満立入禁止を示す標識。
これにより、入店前のお客様に喫煙環境を明示し、受動喫煙を避けたい人が選択できるようにします。
喫煙室の基準と種類
条例や法律に適合した喫煙室を作るためには、クリアしなければならない「技術的基準」があります。
喫煙専用室の基準
紙巻たばこを含むすべてのたばこが吸える部屋です。この中での飲食は不可です。設置には以下の3つの基準をすべて満たす必要があります。
- 出入口の風速:
室外から室内へ流入する空気の気流が0.2m/s以上であること。 - 区画:
壁、天井等によって完全に区画されていること。 - 排気:
たばこの煙が屋外へ排気されていること。
加熱式たばこ専用室
加熱式たばこのみが吸える部屋で、飲食等のサービス提供が認められています。技術的基準(風速・区画・排気)については、喫煙専用室と同様の条件を満たす必要があります。
屋外喫煙所
建物の外に設置する場合、屋内のような数値基準はありませんが、「周囲の状況への配慮」が義務付けられています。近隣の建物や通行人に煙が流れないよう、パーテーションで囲うなどの対策が必要です。

喫煙室の換気・排気で必要なポイント
法令基準をクリアするためには、適切な換気設計が不可欠です。
必要な気流と気圧
最も重要なのが「進入風速0.2m/s以上」の確保です。これは、ドアの開閉時などに煙が非喫煙エリアへ逆流するのを防ぐための基準です。これを実現するためには、喫煙室内の空気を強力に排気し、室内を「負圧(外よりも気圧が低い状態)」に保つ必要があります。
必要換気量
0.2m/sの風速を確保するために必要な換気量は、出入口の開口面積から計算されます。
必要換気量(m³/h)=開口面積(㎡)× 0.2(m/s)× 3600(秒)
この計算に基づき、十分な能力を持つ換気扇を選定し、給気と排気のバランスを整える必要があります。
におい漏れを防ぐ構造
排気が十分でも、排気ダクトの出口が近隣の窓に近い場合や、給気口とショートサーキットを起こしている場合は、臭いトラブルになります。排気口の位置や向き、脱臭装置の併用なども含めた総合的な設計が求められます。
設置の流れと費用の考え方
喫煙室導入の一般的なステップとコストについて整理します。
導入のステップ
- 計画・事前調査:
店舗の図面確認、法令・条例の適用範囲の確認。 - 現場調査:
排気ルートの確認、風速測定(既存設備がある場合)。 - 機器選定・設計:
基準を満たす設備やレイアウトの決定。 - 設置工事:
内装工事、電気工事、ダクト工事など。 - 検査・届出:
風速測定による基準クリアの確認、保健所への届出(必要な場合)。
設置コストの考え方
コストは、「本体価格(ブース等の場合)」「設置工事費(ダクト・電気等)」「維持費(フィルタ交換・電気代)」で構成されます。
内装工事で一から作る場合は工事費が変動しやすいですが、ユニット型の喫煙ブースであれば費用感が把握しやすく、工期も短縮できます。
小規模店舗での代替案
「工事をするスペースがない」「排気ダクトが出せない」といった場合、経過措置として認められている「脱煙機能付き喫煙ブース(循環型)」の導入が有効です。
厚生労働省の技術的基準(TVOC除去率95%以上など)を満たした製品であれば、屋内で空気を浄化して循環させることが可能です。
条例対応に役立つトルネックス製品
トルネックスでは、厳しい条例や法令基準をクリアするための高性能な分煙設備を提供しています。
分煙脱臭ブース(IKBJP)
分煙脱臭ブース(IKBJP)は、屋内設置用の循環型ブースです。高性能なフィルタシステムにより、タバコの煙と臭いを強力に除去し、屋内に排気しても臭いが気になりません。ダクト工事が不要なため、テナント店舗やオフィスでも手軽に導入でき、法令基準(風速0.2m/s以上等)も確実に満たします。

屋内外対応 喫煙ブース
屋内外対応 喫煙ブースは、屋外設置も可能な耐久性の高いブースです。
近隣への配慮が必要な屋外喫煙所や、工場の敷地内などに適しています。脱臭機能を付加することで、屋外排気による臭いトラブルも防ぎます。
屋内外対応喫煙ブース+ 高性能プラズマ集塵脱臭装置の導入事例
トルネックスのサポート
トルネックスは単なる機器メーカーではなく、分煙コンサルティング企業として、お客様の課題解決をサポートします。
「今の店舗で基準を満たすにはどうすればいいか」「助成金は使えるか」といったご相談に対し、現場調査から最適なプランの提案、設置後のメンテナンスまでワンストップで対応します。
まとめ
受動喫煙防止条例への対応は、飲食店の経営継続や企業のコンプライアンス遵守において避けて通れません。
屋内喫煙室を設置する場合は、「風速0.2m/s以上」「密閉区画」「屋外排気(または基準適合脱臭)」という3つの要件を確実に満たす必要があります。
条例に沿った喫煙室の導入や基準の確認については、WEB面談でもご相談可能です。設備選びから設置まで、専門スタッフがサポートします。
