分煙は、受動喫煙を防ぎつつ、喫煙者と非喫煙者の双方が快適に過ごせる環境づくりの基本です。2020年の改正健康増進法の施行以降、多くの施設で対策が進みましたが、現場の管理者からは「具体的にどのように分けるのが正解なのか」「何から手をつければよいのか分からない」といった戸惑いの声も聞かれます。
単に場所を区切るだけでは、煙の流出や臭いのトラブルを防ぐことはできません。本記事では、分煙の正しい定義から具体的な実施方法、そして設備の選び方までを整理します。あわせて、分煙におけるあらゆる課題を解決するトルネックスの総合的なソリューションについても詳しく紹介します。

分煙とは何か・基本的な考え方
まずは「分煙」という言葉の定義と、現代の施設管理において求められている役割について整理します。
分煙の意味と目的
分煙とは、文字通り「喫煙する場所」と「喫煙しない場所」を明確に分けることです。しかし、その本質的な目的は、非喫煙者が望まない受動喫煙をしてしまうリスクを限りなくゼロにすることにあります。
かつては「エリアを分けるだけ」の不完全な分煙も多く見られましたが、現在は空間を物理的に遮断し、空気の流れ(気流)を制御して、煙や臭いを禁煙エリアに漏らさないことが求められます。これにより、非喫煙者の健康を守ると同時に、喫煙者にとっても気兼ねなく休息できる環境を提供し、施設全体の快適性を向上させることが現代の分煙です。
分煙と禁煙の違い
よく混同されるのが「完全禁煙」との違いです。完全禁煙は敷地内での喫煙を一切禁止することですが、分煙は「ルールを守れば喫煙できる場所を提供する」という点で異なります。
施設を完全禁煙にすれば管理は楽になる一方で、隠れ喫煙や敷地外周辺での路上喫煙、吸い殻のポイ捨てといったモラル低下を招くリスクがあります。多様な人が利用する商業施設や、多くの従業員が働くオフィス・工場などでは、一方的な禁止よりも、適切な設備を整えた上での分煙の方が、結果として環境美化やトラブル防止につながるケースが多くあります。
分煙の種類と導入方法
分煙を実現するためには、建物の構造や利用状況に合わせて適切な方法を選ぶ必要があります。代表的な3つのパターンを解説します。

喫煙専用室タイプ
屋内に壁で囲まれた専用の部屋を設置する方法です。改正健康増進法においては、最も一般的な形態です。設置には以下の技術的基準を満たす必要があります。
- 出入口において、室外から室内へ流入する空気の気流が0.2m/s以上であること
- たばこの煙が室内から室外に流出しないよう、壁や天井等によって区画されていること
- たばこの煙を屋外に排気していること
ただし、既存の建物などで屋外への排気が難しい場合は、経過措置として「脱煙機能付き喫煙ブース」の設置が認められています。
脱臭機活用方式
喫煙室はあるが、排気を増量できない場合に検討される方法です。パーティションなどで空間を仕切り、高性能な脱臭機を用いて、非喫煙エリアに排気し、進入風速を確保する方法です。
こちらも経過措置対応となります。
屋外型ブース方式
建物の屋内を全面禁煙とし、屋外に喫煙所を設ける方法です。屋内のスペースを有効活用できるメリットがあります。
屋外であっても、煙が近隣に流れないよう配慮する義務があります。単に灰皿を置くだけではなく、屋根と壁のあるコンテナハウス型のブースを設置したり、煙が拡散しないよう植栽やフェンスで囲ったりする対策が必要です。
分煙を成功させるための設備要素
効果的な分煙を行うためには、以下の3つの設備要素が重要になります。
換気・排気の考え方
煙を充満させないためには、適切な換気量の確保が不可欠です。しかし、換気扇が強力すぎるとドアが開けにくくなったり、空調効率が悪化したりします。重要なのは「空気の流れ」です。
新鮮な空気をどこから取り入れ(給気)、汚れた空気をどこへ流すか(排気)。喫煙者の口元から排気口までの距離を短くし、煙が拡散する前に吸い込む設計が理想的です。
フィルタと脱臭技術
空気を循環させる場合や、屋外排気でも近隣への配慮が必要な場合は、フィルタ性能が鍵を握ります。
| フィルタの種類 | 特徴 |
| プレフィルタ | 大きなホコリを除去する。 |
| 集塵フィルタ | 微細な粉塵(煙の粒子)を除去する。電気集塵式やHEPAフィルタなどがある。 |
| 脱臭フィルタ | 活性炭や特殊吸着剤を使用し、ガス状の臭い成分を除去する。 |
特にタバコ特有の臭い(アンモニア、アセトアルデヒド、酢酸など)は、一般的な空気清浄機のフィルタでは取り切れないことがあるため、専用の脱臭技術が必要です。
安全・衛生面の配慮
タバコのヤニ(タール)は粘着性があり、壁や天井に付着すると黄ばみや悪臭の原因になります。また、清掃を怠るとダクト内にタールがホコリと共に蓄積し、排気風量が下がります。
清掃のしやすさ、メンテナンスの容易さを考慮した設備選びも、長期的な運用には欠かせません。
分煙のメリット・デメリット
導入前に、メリットと課題を整理しておきましょう。
分煙のメリット
- 受動喫煙の防止:
非喫煙者の健康を守り、快適な職場・施設環境を提供できます。 - トラブルの減少:
「臭い」「煙たい」といったクレームや、隠れ喫煙によるボヤ騒ぎなどのリスクを低減できます。 - 企業イメージの向上:
コンプライアンスを遵守し、従業員や顧客の健康に配慮する企業姿勢を示せます。 - 業務効率の維持:
喫煙者が遠くの喫煙所まで移動する時間を削減し、リフレッシュ環境を整えることで生産性維持につながります。
分煙のデメリット
- 導入コスト:
設備購入費や工事費などの初期投資が必要です。 - スペースの確保:
喫煙所を設けるための場所が必要です。 - 維持管理の手間:
フィルタ交換や定期的な清掃、点検が必要です。
トルネックスの総合分煙ソリューション
分煙対策には、「法令対応」「屋外対策」「汚れ防止」「臭い漏れ」「老朽化」など、施設ごとに異なる課題が存在します。
トルネックスは、これらのあらゆる課題に対応できる幅広い製品ラインナップとサービスを展開しています。それぞれの課題に対する解決策を紹介します。
1. 法令を遵守し、確実に分煙したい場合
屋内喫煙所を設置する際、最も重視すべきは改正健康増進法の基準クリアです。特に屋外排気が難しい場所では、経過措置に対応した脱煙機能が必須です。
- 分煙脱臭ブース(IKBJP/IKCJP):
TVOC除去率95%以上などの厳しい技術的基準を満たしたパッケージ型ブースです。ダクト工事不要で設置でき、すぐに法令適合した環境を作れます。IKCは1人用、IKBは複数人用とサイズも選べます。

- 高性能プラズマ集塵脱臭装置:
プラズマの力で煙と臭いを強力に分解・除去します。天井裏などに設置し、高い浄化能力でクリーンな排気を実現します。

- 2wayエアカーテンボックス:
喫煙所の出入口に設置し、空気の層で「見えない扉」を作ります。ドアの開閉による煙の流出を物理的に遮断します。

2. 屋外での喫煙環境を良くしたい場合
屋外設置では、近隣への配慮義務が求められます。
- 屋内外対応 喫煙ブース:
耐久性と耐候性に優れたコンテナハウス型のブースです。エアコン設置も可能で、煙をろ過して排気するため、周囲への影響を最小限に抑えます。 - 屋外エアカーテン:
既存の開放型喫煙所の開口部に設置します。強力な風で煙を封じ込め、風に乗って煙が近隣へ流れるのを防ぎます。
3. 喫煙所内の粉塵やヤニ汚れを抑制したい場合
「喫煙所の壁がすぐに黄色くなる」「服に臭いがつく」という悩みには、煙を拡散させない気流制御技術が有効です。
- トルネード カウンター:
手元で素早く煙を吸引します。煙が拡散する前に捕集するため、室内の空気をきれいに保てます。 - トルネックス アリア:
業界初の下部吸込方式を採用。天井に向かって上がる煙を効率よくコントロールし、天井や壁の黄ばみを劇的に抑制します。 - トルネックス ポラリス:
天井埋め込み型の空気清浄機で、静音性と省エネ性能に優れています。
4. 喫煙者の出入りによる「ニオイ漏れ」を防ぎたい場合
喫煙所から戻ってきた人の服についた臭い(三次喫煙)や、人の動きに伴う空気の流出も対策が必要です。
- 衣服消臭スポットエアー:
喫煙所内に設置し、天然成分の消臭剤を衣服に吹きかけることで、戻り臭を低減します。 - ゲート型中和消臭装置:
通路や出入口にゲートとして設置し、通過する際に消臭効果のある空気を浴びせることで、臭いの持ち込み・持ち出しを防ぎます。
5. 経年劣化で汚れた喫煙所を再生したい場合
長年使用して汚れや臭いが染み付いた喫煙所は、機器の入れ替えだけでは改善しないことがあります。
トルネックスの「リメイクサービス」では、壁紙や床材の張り替え、照明のLED化、そして最新の分煙機への更新をパッケージで提供。新設するよりも低コストで、新築同様の清潔な喫煙所へと再生します。
導入ステップと選び方
最適な分煙環境を実現するための手順を整理します。
設置前のチェック
- 利用者数:
1日あたりの人数とピーク時の集中度合い。 - 設置場所:
屋内か屋外か、排気ダクトの有無、電源確保。 - 法的要件:
建物の種類や条例による規制確認。
費用とモデル選定
初期費用(機器代・工事費)だけでなく、ランニングコスト(電気代・フィルタ交換費)も含めて検討します。
トルネックス製品は、フィルタの長寿命化やメンテナンスのしやすさを考慮した設計になっており、長期的な運用コストを抑える工夫がされています。
設置から運用までの流れ
- お問い合わせ・ヒアリング:
課題の洗い出し。 - 現地調査:
専門スタッフによる計測と確認。 - プラン提案・見積:
最適な機種とレイアウトの提示。 - 設置工事:
施工と試運転調整。 - 運用開始・保守:
定期メンテナンスによる性能維持。
まとめ
分煙は、単なる設備の設置ではなく、利用者全員が快適に過ごすための環境づくりです。
屋内・屋外の条件、煙・臭いの悩み、そして予算に合わせて最適な方法を選ぶ必要があります。トルネックスなら、改正健康増進法に対応したブースから、屋外対策、臭い漏れ防止、さらにはリメイクまで、分煙に関するあらゆる課題をワンストップで解決できます。
「自社に合う製品がわからない」「具体的なコストを知りたい」という方は、ぜひWEB面談をご利用ください。専門のコンサルタントが画面共有などを通じて、お客様の施設に最適なプランを分かりやすくご提案します。
