商業施設やオフィスビル、工場、自治体の庁舎など、あらゆる施設において「喫煙所」の在り方が問われています。2020年の改正健康増進法施行以降、原則屋内禁煙が進む一方で、喫煙者と非喫煙者が共存できる環境整備、すなわち分煙対策へのニーズは依然として高いままです。
本記事では、喫煙所の設置を検討されている管理者の方に向けて、屋内と屋外それぞれの法令基準や設置ポイント、導入の流れを詳しく解説します。また、厳しい基準をクリアし、屋内外に対応した喫煙ブースを展開する株式会社トルネックスのソリューションについても紹介します。

喫煙所を作る前に押さえるべき基礎知識
喫煙所づくりで最も重要なのは、法令遵守と周囲への配慮です。屋内と屋外では求められる要件が大きく異なるため、まずはその前提となる知識を整理しましょう。

改正健康増進法の基準
2020年4月に全面施行された改正健康増進法により、多くの施設で屋内は原則禁煙となりました。しかし、一定の条件を満たすことで「喫煙専用室」などを設置することが可能です。ここで特に注意が必要なのが、屋内に設置する場合の技術的基準です。
原則として、屋内の喫煙室はタバコの煙を屋外へ排出する設備が必要です。しかし、2020年4月1日時点で既に存在している建築物(既存特定建築物等) においては、建物の構造上、新たにダクトを通して屋外へ排気することが困難なケースが多々あります。テナントビルや地下街、高層階などがこれに該当します。
こうしたケースでは、特例として「経過措置」を活用した喫煙所の設置が認められています。これは、屋外排気ができない場合でも、以下の3つの技術的基準をすべて満たす「脱煙機能付き喫煙ブース」を設置すれば、屋内に喫煙所を設けられるというものです。
- 総揮発性有機化合物(TVOC)の除去率が95%以上であること。
TVOCはタバコの臭いの元となるガス状成分です。これを高いレベルで除去する必要があります。 - 浄化され室外(室内空間)に排気される空気における浮遊粉じんの量が0.015mg/m³以下であること。
これは一般的なオフィス環境の空気質と同等か、それ以上にクリーンな数値を維持することが求められます。 - 喫煙専用室等に向かう気流が、開口面の全ての測定点で0.2m/s以上であること。
人の出入りなどでドアが開いた際、煙が禁煙エリア(室内)へ逆流しないための風速基準です。
これから屋内に喫煙所を作る場合、特に既存建物であれば、この「経過措置」に対応したブースを選定することが、法令遵守の近道となります。
屋外喫煙所に必要な条件
一方、屋外に喫煙所を設置する場合、屋内のような「TVOC除去率95%以上」といった厳密な数値規制は法律上定められていません。しかし、だからといって自由に設置して良いわけではありません。改正健康増進法では、屋外であっても「周囲の状況に配慮しなければならない(配慮義務)」と明記されています。
具体的には、以下のような配慮が求められます。
- 施設の出入口や窓の近くなど、人が頻繁に通る場所を避ける。
- 近隣の建物や住宅地に煙や臭いが流れないようにする。
- 子どもや患者など、特に配慮が必要な人が利用するエリアから離す。
数値基準がない分、施設管理者の裁量と責任において、非喫煙者からクレームが出ないような場所選びと設備対策を行う必要があります。単に灰皿を置くだけの喫煙所では、煙が拡散してトラブルの原因となるため、パーティションで囲ったり、屋外対応の空気清浄機を導入したりするケースが増えています。
受動喫煙対策の考え方
受動喫煙対策の基本は、「喫煙エリアと非喫煙エリアを明確に分けること」と「煙・臭いを漏らさないこと」の2点に集約されます。
タバコの煙には、目に見える「粒子状物質(粉じん)」と、目に見えない「ガス状物質(ニオイ)」が含まれています。不完全な分煙対策では、粉じんは防げてもニオイ成分が漏れ出し、周囲に不快感を与えてしまいます。
効果的な対策としては、壁やパーティションによる物理的な遮断に加え、空気の流れ(気流)を制御する技術が不可欠です。喫煙所内を常に「負圧(外よりも気圧が低い状態)」に保ち、空気の入り口から出口への一定の流れを作ることで、煙の拡散を防ぎます。また、衣服に付着したニオイ(三次喫煙)への対策も、近年では重要な検討事項となっています。
屋内喫煙所の作り方
屋内に喫煙所を設置する場合、前述の「経過措置」に対応するための具体的な設備構成や設計ポイントを見ていきましょう。
屋内喫煙室の基準
屋内喫煙室の設置において絶対に守らなければならないのが、煙の漏洩防止です。壁や天井に隙間がない「密閉性」を確保した上で、出入り口の開口面積に応じた適切な排気風量を計算する必要があります。
特に重要なのが「入口風速0.2m/s以上」の維持です。これを実現するためには、換気扇などの排気設備が強力であれば良いというわけではありません。給気(空気の取り入れ)と排気(空気の排出)のバランスが崩れると、ドアが開けにくくなったり、逆に隙間風のような音が鳴ったりします。適切な給排気バランスを設計することが、快適で安全な喫煙室作りの第一歩です。
換気とフィルタ性能
既存建物でダクト工事ができない場合、室内の空気を循環させて浄化する「循環式分煙機(脱煙機能付き喫煙ブース)」を採用します。この方式では、フィルタの性能が喫煙所の質を決定づけます。
法令基準である「TVOC除去率95%以上」をクリアするには、単なる活性炭フィルタだけでは不十分な場合があります。特殊な吸着剤を使用したフィルタや、プラズマ脱臭技術などを組み合わせた高性能な脱臭ユニットが必要です。
また、メンテナンス頻度も考慮すべきポイントです。フィルタはタバコのヤニやホコリで徐々に目詰まりします。性能が落ちた状態で使い続けると、法令基準を下回るだけでなく、故障の原因になる可能性があります導入時には、フィルタ交換のコストや手間の少なさも比較検討の材料にしましょう。
屋外喫煙所の作り方
屋外喫煙所は、気候や周辺環境の影響を直接受けるため、屋内とは異なる視点での設計が必要です。
屋外喫煙スペースの種類
屋外の喫煙所には、大きく分けて「開放型」と「閉鎖型(ブース型)」があります。
- 開放型策
パーティションや植栽で目隠しをするだけのタイプ。コストは安いですが、煙が風に乗って流出し やすく、近隣配慮の観点では不十分な場合があります。 - 閉鎖型(コンテナ型・プレハブ型)
壁と屋根で覆われた小屋のようなタイプ。エアコンを設置すれば快適性が増し、内部の空気をフィルタで浄化してから排出する機能を持たせることで、周囲への影響を最小限に抑えられます。
近年では、受動喫煙防止の意識の高まりから、屋外であっても閉鎖型あるいは半閉鎖型のブースを設置する事例が増えています。
設置環境に応じた設計ポイント
屋外設置では、安全性と耐久性が必須です。
- 雨風・台風対策
屋外用ブースは建築基準法上の工作物や建築物として扱われることがあります。強風で倒壊しないよう、強固な基礎工事とアンカー固定が必要です。また、屋根材や外壁材には、錆に強く耐候性の高い金属系外壁材を選定することが望ましいです。。 - 照明と防犯
夜間も利用する場合は、ブース内だけでなく周辺の足元を照らす照明が必要です。死角にならないような配置や、ガラス面を多くして外から中の様子がわかるようにするなど、防犯面への配慮も欠かせません。 - 床材
タバコの火が落ちても燃え広がらない不燃性の床材を選定します。清掃のしやすさも考慮し、水洗い可能な素材や、汚れが目立たない色が好まれます。
屋外での換気・排気の考え方
屋外喫煙所における最大の課題は「排気された煙の行方」です。ブース内で煙を集めても、それをそのまま外へ排出しては、排気口の近くを通る人が煙を吸い込んでしまいます。
これを防ぐためには、以下のような対策が有効です。
- 排気方向の調整:
排気口を人の動線とは逆方向、あるいは高い位置に向けて設置し、拡散させる。 - 集塵フィルタの活用:
ヤニなどの粉塵を除去してから排気する電子式集塵フィルタ搭載の換気ユニットを採用する。 - 脱臭フィルタの活用:
屋外用ブースであっても、屋内で使用されるような高性能な集塵・脱臭フィルタを搭載した換気ユニットを採用し、クリーンな空気にしてから排出する。 - エアカーテンの併用:
開放型の喫煙所の場合、開口部に「屋外用エアカーテン」を設置し、風による煙の漏れ出しを抑制する。
トルネックスの屋内外対応喫煙ブース
分煙対策の専門メーカーである株式会社トルネックスは、厳しい法令基準をクリアする高い技術力で、屋内外それぞれの課題に対応したソリューションを提供しています。


千葉県/空港
https://www.tornex.co.jp/cases/3785
製品ラインナップの特徴
トルネックスの製品は、独自技術を応用し、煙を効率よく捕集・浄化することに優れています。
【屋外・屋内外対応製品】
屋内外対応 喫煙ブース:
耐久性に優れたフレームとパネルを採用したオールインワンタイプのブースです。エアコンの取り付けも可能で、快適な喫煙環境を提供します。
屋外エアカーテン:
開放型の屋外喫煙所などで、煙が流れ出るのを防ぐために設置します。強力な空気の遮断壁を作り、周辺への煙の流出を抑制します。
高性能プラズマ集塵脱臭装置:
プラズマの力で煙と臭いを強力に分解・除去する装置です。屋外ブースの排気ユニットとしても活用され、クリーンな排気を実現します。
【屋内対応製品】
1人用分煙脱臭ブース(IKCJP):
省スペースで設置可能な個室タイプ。小規模オフィスや限られたスペースに最適です。
分煙脱臭ブース(IKBJP):
複数人で利用できる標準タイプ。経過措置の技術的基準をクリアしており、ダクト工事不要で導入可能です。
2wayエアカーテン:
喫煙所の出入口に設置し、空気の力で煙を遮断します。ドアの開閉による煙漏れを防ぐと同時に、冷暖房効率の低下も防ぎます。
導入によるメリット
トルネックス製品を導入する最大のメリットは、「確実な法令適合」と「安心感」です。
特に屋内の既存建物において、経過措置を活用する場合、トルネックスのブースはTVOC除去率や粉じん濃度などの基準を明確に満たしているため、安心して設置できます。また、屋外においても、エアカーテンや高性能脱臭装置を組み合わせることで、近隣トラブルのリスクを大幅に低減できます。 さらに、メンテナンスサポートも充実しており、フィルタ交換や清掃などの管理負担を軽減できる点も、多くの施設管理者に選ばれている理由です。
導入の流れ
お問い合わせから運用開始まで、専任の担当者がサポートします。
- お問い合わせ・ヒアリング:
現状の課題や設置希望場所について伺います。 - 現地調査:
専門スタッフが現地を訪問し、電源位置や搬入経路、法的要件を確認します。 - ご提案・お見積り:
最適な機種とレイアウトプラン、工事費を含めたお見積りを提出します。助成金の活用についても相談可能です。 - 設置工事:
施工管理のもと、迅速かつ安全に設置工事を行います。 - お引渡し・運用開始:
性能測定を行い、問題がないことを確認してお引渡しとなります。その後は定期メンテナンスで性能を維持します。
まとめ
喫煙所づくりは、単に場所を確保すれば良いというものではありません。屋内であれば改正健康増進法の厳格な技術的基準(TVOC除去率95%以上など)を、屋外であれば周辺環境への十分な配慮をクリアする必要があります。これらを無視した設置は、法的リスクや近隣トラブルを招く原因となります。
屋内と屋外では求められる条件や設備が大きく異なるため、それぞれの特性を理解し、実績のある専門メーカーの製品を選定することが成功の鍵です。トルネックスでは、豊富なラインナップとノウハウで、お客様の施設に最適な喫煙所づくりをトータルでサポートします。
具体的な設置プランやコスト感、助成金の活用などについて詳しく知りたい方は、ぜひWEB面談をご利用ください。専門スタッフが画面共有などを通じて、わかりやすくご説明いたします。
