店舗の入り口や工場の搬入口を開放したまま、空調効率を高め、外部からの虫やホコリの侵入を強力に防ぐ設備がエアカーテンです。2021年のHACCP義務化以降、食品工場や飲食店における衛生管理の重要性は一段と増しており、入り口の水際対策としてエアカーテンの導入を検討する企業が急増しています。
しかし、いざ導入を検討する際に最も高い壁となるのが「費用」の問題です。インターネットで検索すれば本体価格が数万円の安価な製品も見つかりますが、業務用として十分な性能を求めると価格帯は大きく跳ね上がります。さらに、設置工事費や電気工事費といった不透明なコストも重なり、最終的な総額が見えにくいという悩みも多く聞かれます。安さだけで選んでスペック不足になれば、設置した意味がなくなり、大切な設備投資が無駄になってしまいます。
本記事では、2026年現在の最新情勢を踏まえ、エアカーテン導入にかかる費用の内訳と相場、そして「コストをかけてでも選ぶべき性能」の見極め方について、専門的な視点から詳しく解説します。

エアカーテン導入にかかる費用の総額目安
エアカーテンの導入には、大きく分けて「本体価格」と「設置・付帯工事費」の2つのコストが発生します。現場の状況によっては、本体代金よりも工事費の方が高額になるケースもあるため、内訳を正しく理解しておくことが不可欠です。
設置工事・電気工事費の内訳と相場
カタログやネット通販に掲載されている価格は、あくまで「本体のみ」の金額です。業務用として安全かつ確実に運用するためには、以下の工事費用が発生します。
取り付け工事費
壁面や天井にエアカーテンを固定するための作業費用です。重量のある業務用機器を固定するには、下地の補強工事が必要になる場合もあります。また、設置場所が3メートルを超える高所であれば、高所作業車のレンタル費用が加算されます。
相場:5万円〜10万円(標準的な壁掛け設置の場合)
電気工事費
エアカーテンを動かすための電源確保にかかる費用です。近くに適切な容量のコンセントがない場合は、分電盤から新たに配線を引き込む必要があります。また、手元でON/OFFを切り替えるためのスイッチ設置工事や、自動ドアと連動させるための信号線工事、三相200Vの動力電源を使用する場合の結線工事などが含まれます。
相場:3万円〜8万円(配線距離や電源の種類による)
諸経費および付帯費用
正確な見積もりを算出するための現場調査(現調)費用、作業員の出張費、梱包材の廃棄費用などです。
相場:1万円〜3万円
これらを合計すると、本体代金に加えて最低でも8万円から15万円程度の工事費用を見込んでおくのが一般的です。正確な金額を知るためには、現場の写真を送るか、実際に担当者に訪問してもらい「正式見積もり」を取ることが重要です。
価格を左右する3つの選定ポイント
エアカーテンの本体価格は、その性能やサイズによって数万円から数十万円まで大きな幅があります。なぜこれほどまでの価格差が生じるのか、選定時にチェックすべき3つのスペックを整理します。
1. 有効到達距離(風速)と設置高さ
エアカーテン選びで最も失敗しやすいのが、この「風の強さ」と「設置高さ」の関係です。
安価な小型モデルや家庭用に近い製品は風力が弱く、床面まで風が届きません。これを高さ3メートル以上の搬入口に設置しても、足元の隙間から虫や外気が自由に出入りしてしまい、防壁としての機能を果たせません。
設置する開口部の高さに適した「有効到達距離」を持つ機種を選ぶ必要があり、対応高さが高くなるほど強力なモーターと精密なファン構造が求められるため、本体価格は上昇します。業務用では風速7m/sから8m/s程度のパワーを持つ機種が標準的な選択肢となります。
2. 電源仕様(単相100Vか三相200Vか)
施設の電気設備状況によって選べる機種が制限されます。
- 単相100V: 一般的な家庭用コンセントと同じ電源です。小規模な店舗や間口の狭いドアに適しています。電気工事が比較的容易ですが、風速の強い大型機種には対応していないことが多い傾向にあります。
- 三相200V: 工場や大型スーパーなどの動力電源です。ハイパワーな機種を駆動させるのに適しており、ランニングコスト(電気代)を抑えられるメリットもあります。ただし、専用の電気工事が必要になります。
3. センサー連動や自動制御の有無
標準的なスイッチでの手動操作に加え、利便性を高める付加機能によって価格が変動します。
- 自動ドア連動機能: ドアが開いた時だけ自動で作動し、閉まると停止する仕組みです。無駄な稼働を抑えて省エネになりますが、連動用のリレーキットや追加の信号線工事が必要となります。
- 防塵・防水仕様: 食品工場の中など、水洗いや多湿環境が想定される場所では、内部のモーターや基板を保護する特殊な仕様が必要になり、価格が上がります。
「安さ」で選ぶと後悔する?よくある失敗事例
初期費用を抑えることだけを優先し、安価な機種を選んだ現場では、導入後に以下のようなトラブルが発生するケースが後を絶ちません。
風が弱くて虫や外気が入り放題になる
予算を優先して低出力の機種を選んだ結果、開口部で発生する風の壁が薄くなり、外部の風(外乱)に押し負けてしまう事例です。
エアカーテンは、外気の圧力よりも強い風のバリアを作らなければ意味がありません。特に負圧(外部から室内方向に空気が流れる状態)が強い工場などでは、中途半端なスペックのエアカーテンは気流が乱されてしまい、防虫・断熱効果を完全に失ってしまいます。
メンテナンス性の低さが招く故障と性能低下
安価な製品の中には、フィルタの取り外しが困難だったり、内部のファンに汚れが溜まりやすかったりするものがあります。
エアカーテンは室内の空気を吸い込むため、フィルタには必ずホコリが蓄積します。ここが目詰まりすると風速が低下し、設置からわずか数ヶ月で防虫効果が半減してしまいます。メンテナンスのしやすさと耐久性は、長期的なコストパフォーマンス(TCO)において非常に重要な要素です。

費用対効果を最大化する「防虫性能」の視点
導入の主な目的が、食品衛生や異物混入対策としての「防虫」であるならば、標準的な送風機としてのエアカーテンではなく、防虫性能を持ったエアカーテンを選ぶとよいでしょう。初期費用は高くなりますが、その効果の差は歴然です。
標準的なエアカーテンでは防ぎきれない虫の侵入
一般的なエアカーテンは「一様な風」を吹き下ろすだけですが、飛行能力の高いハエや、内部の食品の匂いに強く執着する蛾などは、風の隙間を突いて強引に突破してくることがあります。また、広い開口部では風を嫌がった虫が横から回り込んで侵入を試みるケースもあります。
投資価値のある「高機能防虫エアカーテン」のスペック
一般のエアカーテンとは異なり、「防虫エアカーテン」は建物への飛来虫の侵入防止を目的とした専用のエアカーテンです。
ここで、高度な衛生管理が求められる現場で選ばれているトルネックスの防虫エアカーテン(ACFJ909)を例に、具体的なコスト感と性能を見てみましょう。

| 項目 | スペック・費用詳細 |
| 本体価格(税抜) | 415,000円 |
| 最大風速 | 約7.0m/s(50Hz時) / 8.0m/s(60Hz時) |
| 独自機能 | フマキラー社製「ウルトラベープPRO」連動機能 |
| 防虫阻止率 | 92.5%(実地試験データによる) |
| 消費電力 | 40W前後(1日24時間運転で電気代約20円) |
この機種の最大の特徴は、物理的な「風」に加えて「科学的なバリア」を搭載している点です。風だけでは防ぎきれない微細な虫や、風をすり抜けようとする執拗な害虫に対し、気流に乗せた安全な忌避剤が強力に作用します。

導入後のランニングコストと長期的メリット
40万円を超える本体価格は、数万円の標準機と比較すれば高額に感じられるかもしれません。しかし、防虫対策においては「侵入を許した後の被害」を考慮しなければなりません。
一度異物混入事故が起きれば、製品の自主回収や企業のブランドイメージ失墜など、数百万、数千万規模の損害が発生するリスクがあります。また、侵入した虫を駆除するために頻繁に殺虫剤を散布するコストや、従業員が清掃に追われる人件費も馬鹿になりません。
トルネックスの防虫エアカーテンのように、電気代が1日わずか20円程度でありながら、入り口周辺の半径3メートルにわたって「忌避エリア(虫が寄り付きたくない空間)」を形成できる製品であれば、長期的な管理コストを劇的に抑えることが可能です。

防虫エアカーテンの導入事例
チョコレートOEMメーカー、株式会社クラウンコンフェクトは、2013年の千葉県への工場移転を機に、自然豊かな環境に合わせた防虫対策を強化。異物混入防止の更なる向上を目指し、忌避剤を併用するトルネックスの防虫エアカーテン「ACFJ909」を3台導入しました。飛翔昆虫や歩行害虫への対策に加え、従業員の衛生意識向上という副次的効果も生まれており、高品質な製品づくりを支える設備として活用されています。


まとめ
エアカーテンの導入費用は、本体価格の安さだけで判断するのではなく、設置工事費を含めた総額と、何より「目的を達成できるスペックかどうか」を冷静に見極める必要があります。
- 設置場所の高さに合った風速があるかを確認する
- 電気工事や取り付け下地の状況を事前に現場調査で見積もる
- メンテナンスのしやすさと、将来的な電力消費量を考慮する
特に、食品を扱う現場で「虫を絶対に入れたくない」という明確な目的がある場合は、初期費用は40万円台からとなりますが、風と薬剤のW効果で守る高機能モデルを選択することが、結果として最も賢い投資となります。
まずは専門メーカーに現場の写真や図面を送り、自社の環境に最適な機種の選定と、工事費を含めた概算見積もりを相談することから始めてみてはいかがでしょうか。
