「喫煙所の煙がこもって利用者から不満が出ている」 「換気扇を回しているのに、ドアを開けると煙が漏れてくる」
喫煙所における換気不足は、利用者だけでなく、周囲の非喫煙者にとっても深刻な問題です。単に換気扇をつけるだけでは、タバコの煙や臭いを効果的に排出することはできません。 法令で定められた基準を満たしつつ、快適な環境を作るためには、正しい「換気量の計算」と「設備選び」が必要です。
本記事では、喫煙所に求められる換気基準や計算方法、換気がうまくいかない原因と対策について解説します。あわせて、換気と脱臭を同時に実現するトルネックスのソリューションについても紹介します。

喫煙所で換気が重要な理由
喫煙所において換気が重要視されるのは、単に煙たいからだけではありません。利用者の健康被害を防ぎ、周囲への受動喫煙を防止するためには、適切な換気によって空気をコントロールすることが不可欠です。
煙の滞留を防ぐため
タバコの煙には、一酸化炭素やニコチン、タールなどの有害物質が含まれています。換気が不十分だと、これらの有害物質が室内に滞留し、高濃度になります。 利用者が濃い煙を吸い込み続けることは健康リスクを高めるだけでなく、衣服や髪の毛に強い臭いが付着する原因にもなります。
臭いの残留を抑えるため
タバコの臭いは、煙の粒子だけでなく、壁や天井に付着したヤニからも発生します。 換気不足で煙が長時間滞留すると、ヤニの付着が加速し、部屋全体が「常にタバコ臭い」状態になります。強力な換気で煙を素早く排出することは、臭いの染み付きを防ぐための第一歩です。
受動喫煙対策として必要
改正健康増進法では、屋内の喫煙室から非喫煙エリアへの煙の流出を防ぐことが義務付けられています。 換気が弱いと、ドアの隙間や開閉時に煙が逆流し、廊下や隣の部屋に漏れ出してしまいます。これを防ぐためには、喫煙室内を「負圧(外よりも気圧が低い状態)」に保つ必要があり、そのためには十分な排気風量が欠かせません。
喫煙所に必要な換気量と基準
では、具体的にどれくらいの換気が必要なのでしょうか。法令に基づく基準と計算方法を見ていきましょう。
換気基準の目安(進入風速)
喫煙所の換気基準として最も重要なのが、改正健康増進法で定められた「技術的基準」の一つである「進入風速0.2m/s以上」です。 これは、喫煙所の出入口において、非喫煙エリアから喫煙所内へ向かう空気の流れ(風速)が毎秒0.2メートル以上必要であることを意味します 。 この風速があれば、ドアが開いた状態でも煙が逆流して外に漏れるのを防ぐことができます。
必要換気量の計算方法
この「0.2m/s」を確保するために必要な換気量(排気風量)は、以下の計算式で求められます。
必要換気量(m³/h) = 開口部面積(m²) × 0.2(m/s) × 3600(秒)
例えば、ドアの開口部が高さ2m、幅0.8mの場合: 開口部面積:2m × 0.8m = 1.6m² 必要換気量:1.6 × 0.2 × 3600 = 1,152 m³/h
つまり、最低でも毎時1,152立方メートルの排気能力を持つ換気扇が必要になります。ただし、フィルターの目詰まりや外風の影響を考慮し、実際にはこれよりも余裕を持った風量(例えば0.25m/s以上)で設計するのが一般的です 。
屋外と屋内で異なるポイント
屋外喫煙所の場合、屋内のような明確な数値基準はありませんが、煙が近隣に流れないよう配慮する義務があります。風向きを考慮した配置や、囲いの設置、場合によっては屋外用の排気・脱臭装置の導入が求められます。
喫煙所に使われる換気設備
喫煙所の換気を行うための設備には、いくつかの種類があります。
換気扇・排気設備
最も一般的なのが、壁や天井に設置する換気扇(有圧換気扇やシロッコファン)です。 部屋全体の空気を入れ替える「全般換気」を行いますが、吸気口(ガラリ)の位置や大きさが不適切だと、換気効率が悪くなります。必ず給気と排気のバランスを計算して設置する必要があります。
喫煙ブースの採用
換気設備と喫煙スペースが一体化したユニット製品です。 強力なファンと高性能フィルターを内蔵しており、煙を素早く吸い込んで浄化してから排出します。換気計算やダクト工事の設計が不要(循環型の場合)で、設置するだけで法令基準を満たす換気環境を作れるのがメリットです 。
換気がうまくいかない原因と対策
「換気扇をつけているのに煙たい」という場合、以下のような原因が考えられます。
給気不足
排気ばかりを強化しても、新しい空気が入ってくる「給気口」がなければ空気は流れません。 密閉性の高い部屋で強力な換気扇を回すと、ドアが重くて開かなくなったり(負圧過多)、排気能力が極端に落ちたりします。ドアにガラリを設けるか、給気ファンを設置して、排気量に見合った給気を確保しましょう。
風量不足
単純に換気扇の能力が足りていないケースです。入口の開口面積が大きいと、必要な換気量も増えます。ピーク時の利用人数を想定し、十分な余裕を持った設備を選定する必要があります。また、フィルターの汚れによる能力低下も見逃せません。
煙の逆流が起きるケース
給気口と排気口の位置が近すぎると、空気がショートサーキット(近道)してしまい、部屋全体の空気が入れ替わりません。 また、エアコンの風が喫煙エリアを直撃し、換気扇の吸い込みを妨害していることもあります。空気の流れ(気流)を可視化し、煙がスムーズに排気口へ向かうレイアウトに修正が必要です。
換気だけでは不十分な場合の対策
換気をどれだけ強化しても、「臭い」の問題は解決しきれないことがあります。

換気をしていても「タバコ臭い」とクレームになる原因
換気設備によって室内の空気環境を維持していても、臭いに関するトラブルが完全に解決しないケースがあります。
主な原因として、以下の2点が挙げられます。
- 排気口からの臭い漏れ
脱臭処理をせずに屋外へそのまま排気すると、建物の排気口付近を通る人や近隣住民から「タバコ臭い」というクレームが発生するリスクがあります。 - 衣服に付着した臭いの持ち出し
換気だけでは、喫煙者の衣服や髪に付着する臭さまでは防げません。喫煙者が執務室などの非喫煙エリアに戻った際、その臭いが周囲に広がり、不快感を与えてしまうことがあります。
脱臭装置との併用
臭い対策には、換気設備に加えて「脱臭装置」の併用が効果的です。 活性炭フィルターやプラズマ脱臭機能を備えた装置を通すことで、タバコ特有のガス状成分(悪臭)を除去してから排気できます。これにより、近隣への配慮と室内環境の改善を同時に実現できます。
喫煙ブースは換気と脱臭を両立
高性能な喫煙ブースは、強力な換気機能と脱臭機能を併せ持っています。 煙が発生した瞬間に吸い込み、フィルターで浄化してから排出するため、室内に煙が広がらず、臭い残りも最小限に抑えられます。
喫煙所の換気設備導入をサポートするトルネックス
トルネックスでは、分煙対策の専門メーカーとして、換気・脱臭に関するトータルソリューションを提供しています。
- 分煙ソリューション
現状の換気風量を測定し、法令基準(0.2m/s)を満たすための改善プランを提案します。

- 高性能プラズマ集塵脱臭装置(VFLJP)
天井裏などに設置し、強力な集塵・脱臭力で室内の空気を浄化します。換気不足の喫煙室に追加導入することで、環境を劇的に改善できます。
「今の換気扇で大丈夫か不安」「臭いクレームをなくしたい」といった課題に対し、最適な設備と運用方法をご案内します。
まとめ
喫煙所の換気は、法令基準である「進入風速0.2m/s」を確保することが最低条件です。 そのためには、適切な排気風量の計算と、給気・排気のバランス設計が欠かせません。さらに、換気だけでは取り切れない臭い対策として、脱臭装置や高性能な喫煙ブースの活用が効果的です。
喫煙所の換気や設備選びについては、WEB面談にてご相談いただけます。お気軽にお問い合わせください。
