喫煙所は火気を扱う場所であり、不適切な管理や設備の不備は、重大な火災事故につながるリスクをはらんでいます。実際に、たばこの火の不始末は、全火災の原因の中でも常に上位に位置しており、施設管理者にとって喫煙所の防火対策は最重要課題の一つです。
「屋外だから大丈夫だろう」
「灰皿があるから問題ない」
そういった油断が、思わぬ事故を招くことがあります。
本記事では、喫煙所で火災が発生する主な原因を紐解きながら、今すぐできる防火対策の基本、そして安全な喫煙環境を維持するための設備選びについて解説します。

喫煙所で火災が起こる主な原因
防火対策を講じるには、まず「なぜ火災が起きるのか」を知る必要があります。喫煙所における火災の多くは、いくつかの共通した要因によって引き起こされます。
吸い殻の処理不備
最も多いのが、吸い殻の不始末です。
火種が完全に消えていない状態で灰皿に捨てられ、溜まった吸い殻の中でくすぶり続け、時間が経ってから発火するケースです。特に、灰皿の中に紙くずやゴミが一緒に捨てられていると、あっという間に炎が上がります。吸い殻が満杯になった状態で放置することも、熱がこもりやすく危険です。
可燃物の放置
喫煙所の周りに燃えやすいもの(可燃物)があることも火災のリスクを高めます。
例えば、段ボール、雑誌、枯れ葉などが近くにあると、何らかの原因で落ちた火種が引火し、延焼する可能性があります。また、清掃用具やスプレー缶などを喫煙所内に保管するのも非常に危険です。
風による火種の飛散
屋外喫煙所や、窓を開け放した屋内喫煙所では、風の影響を受けます。
強風によって手元の火種が飛ばされたり、灰皿から吸い殻が舞い上がったりして、離れた場所にある可燃物に着火することがあります。特に乾燥する季節は、小さな火種でも大きな火災につながりやすいため注意が必要です。
喫煙所の防火対策の基本
火災リスクをゼロにすることは難しくても、日々の管理と設備の見直しによって、その確率を限りなく低くすることは可能です。

灰皿の適切な管理
灰皿は、必ず不燃性で、蓋がついているものや、開口部が狭く酸欠状態になりやすい構造のものを選びましょう。
運用面では、以下の対策が有効です。
- 水を入れる:
灰皿には常に水を張っておき、火種を確実に消すようにします(ただし、ヤニが溶け出して強烈な臭いの原因になるため、こまめな交換が必要です)。 - ペール缶の活用:
灰皿とは別に、吸い殻回収専用の金属製ペール缶を用意し、喫煙後は吸い殻をそこに移すルールにするのも一つの方法です。 - 定期的な回収:
吸い殻を溜めすぎないよう、清掃頻度を決めて回収します。
周囲の可燃物の排除
喫煙所の半径数メートル以内には、燃えやすいものを置かないことを徹底します。
掲示板のポスターや観葉植物(特に枯れたもの)も火災の原因になり得るため、配置には十分な配慮が必要です。「喫煙所内は整理整頓」をルール化し、余計な物を持ち込ませないようにしましょう。
消火器の設置
万が一の初期消火に備え、喫煙所のすぐ近く、または内部に消火器を設置することは必須です。
目立つ場所に置き、使用方法を掲示しておくことで、緊急時の対応スピードが変わります。自動消火装置付きの灰皿を導入するのも効果的です。
屋内喫煙所での防火基準
屋内に喫煙所を設ける場合は、消防法や建築基準法に基づく防火基準を守る必要があります。
消防法で求められるポイント
屋内喫煙室は、建築基準法や消防法において、しばしば厳格な防火区画として扱われることがあります。特に、火災の発生や延焼を防ぐために、壁や天井、床といった内装の仕上げ材には、国土交通大臣が定める「不燃材料」またはそれに準ずる性能を持つ材料の使用が義務付けられています。これは、喫煙室という特性上、火源が発生しやすい環境であることを考慮した措置です。
また、消防設備に関しても、一般的な居室とは異なる詳細な基準が適用されます。具体的には、火災発生時に初期消火を行うためのスプリンクラー設備の設置が求められる場合があり、その際にはタバコの煙による誤作動を防ぎつつ、効果的な散水が可能な配置(散水障害の回避)が重要になります。さらに、火災の早期発見を目的とした火災報知設備(自動火災報知設備など)の設置義務についても、延床面積や建物の用途に応じて、関係法令に基づき詳細な確認が必要です。これらの設備は、利用者の安全確保と建物全体の防火対策の要となります。
換気と気流の管理
煙が充満することは、火災時の視界不良や避難の妨げになるだけでなく、一酸化炭素中毒のリスクも高めます。
適切な換気設備を整え、常に新鮮な空気が取り入れられる状態を維持することが重要です。
屋外喫煙所での防火対策
屋外であっても、油断は禁物です。喫煙所における火災リスクを最小限に抑えるため、以下のような具体的な防火対策を徹底しましょう。
風の強い場所を避ける
ビルの谷間や建物の角など、常に風が強く吹き抜け、渦を巻きやすい場所への設置は、火種や煙が周囲に拡散しやすくなるため避けるべきです。たばこの火が風で飛ばされ、枯れ葉やゴミなどに引火するリスクが高まります。どうしても設置する場合は、防風壁や目隠しとなるフェンスを設けるなどして、火種が飛ばない、また、風の影響を受けにくい構造にする工夫が必要です。防風壁は、不燃性の素材を選ぶことが重要です。
耐久性のある灰皿の使用
屋外では、雨風や紫外線による劣化が急速に進みやすいです。プラスチック製の簡易な灰皿は、熱に弱く、劣化すると破損しやすいだけでなく、最悪の場合、火災の原因にもなりかねません。そのため、錆に強く、耐久性のある金属製(ステンレスなど)や、重量があり安定性の高いコンクリート製のスタンド灰皿を選びましょう。また、強風や利用者の不注意による転倒を防ぐために、地面にアンカー固定する、あるいは重量のある台座を選ぶなどの対策も極めて有効です。灰皿の容量が十分にあること、そして定期的な清掃と吸い殻の処理も欠かさず行うことで、火災リスクを低減できます。
喫煙環境の安全管理を支えるトルネックス
トルネックスでは、製品の提供だけでなく、防火対策を含めた喫煙所のトータルコーディネートを行っています。
「今の喫煙所は安全だろうか」「消防法に適合しているか不安だ」といったご相談に対し、専門的な視点からアドバイスを行います。
まとめ
喫煙所の防火対策は、灰皿の管理や可燃物の排除といった基本的なルールの徹底と、安全性の高い設備の導入によって実現できます。
火災は一度起きれば取り返しがつきません。リスクを最小限に抑えるために、今一度、自社の喫煙環境を見直してみてはいかがでしょうか。
防火対策を含む喫煙所設備の相談は、WEB面談でも案内できます。お気軽にお問い合わせください。
