「オフィスの空きスペースに喫煙ブースを置きたいが、消防法の許可が下りるか不安だ」
「屋外に喫煙所を作ろうとしたら、建築確認が必要だと言われた」
喫煙所の設置や改修を検討する際、多くの施設管理者が直面するのが「法律の壁」です。喫煙所は単なる休憩スペースではなく、火気を扱う特殊な設備であるため、設置には複数の法律や基準が絡み合います。これらを無視して設置してしまうと、違法建築となったり、消防点検で指摘を受けたりするだけでなく、万が一の火災時に重大な責任を問われるリスクさえあります。
しかし、屋内と屋外では適用される法律の重点が異なり、どこに気をつけるべきかが分かりにくいのが現状です。本記事では、喫煙所設置において特に重要となる「改正健康増進法」「消防法」「建築基準法」の3つの視点から、遵守すべき基準とクリアするためのポイントを整理して解説します。

喫煙所設置に関わる3つの主要な法律・基準
喫煙所の設置基準を理解する上で、まずは「屋内」と「屋外」で適用されるメインの法律が異なることを押さえておく必要があります。大きく分けると、屋内は「改正健康増進法」と「消防法」、屋外は「建築基準法」が大きなウェイトを占めます。
屋内喫煙所のベースとなる「改正健康増進法」
屋内喫煙所の設置において、まずクリアしなければならないのが、受動喫煙防止を目的とした「改正健康増進法」の技術的基準です。これは、たばこの煙が非喫煙エリアに漏れ出さないための最低限のルールと言えます。
具体的には以下の3つが求められます。
- 区画:
壁や天井等で、喫煙室とそれ以外の場所が完全に仕切られていること。 - 排気:
たばこの煙が屋外へ排気されていること(または基準を満たす脱臭装置で浄化されていること)。 - 気流:
喫煙室の入口において、室外から室内へ流入する空気の気流(進入風速)が0.2m/s以上確保されていること。
これらはあくまで「煙を漏らさないための基準」であり、建物の安全性や防火に関する基準とはまた別物です。屋内設置では、この健康増進法をクリアした上で、さらに厳しい「消防法」の要件を満たす必要があります。
屋外喫煙所で注意すべき「建築基準法」
一方、屋外に喫煙所を設置する場合、最も注意が必要なのが「建築基準法」です。
「雨よけの屋根と壁がある喫煙所」を作ろうとする場合、それは法律上「建築物」として扱われる可能性が高くなります。建築物となれば、建ぺい率や容積率の制限を受けるほか、基礎工事の強度や防火性能など、一般の建物と同じような厳しい基準が適用されます。
一定の規模を超える場合は「建築確認申請」が必要となり、手続きに時間と費用がかかります。「ただのプレハブ小屋だから大丈夫だろう」と安易に設置すると、違法建築として撤去を命じられることもあるため注意が必要です。
安全を守るための「消防法」
消防法は、屋内・屋外問わず適用されますが、特に屋内に喫煙ブースなどの「箱」を新たに設置する場合に大きなハードルとなります。
火災が発生した際、スプリンクラーや火災報知器が正常に作動するか、避難経路が確保されているかなどが厳しくチェックされます。特に、後付けの喫煙ブース設置においては、既存のスプリンクラー設備との兼ね合い(散水障害)が最大の課題となるケースが多く見られます。
屋内喫煙ブース設置で最も注意すべき「消防法」の散水障害
近年、工事不要で設置できる「喫煙ブース」が人気ですが、導入時に最もトラブルになりやすいのが消防法上の「散水障害」という問題です。これは、ブースを置くことで、天井にあるスプリンクラーからの放水が遮られてしまう現象を指します。

スプリンクラーの散水障害とは
オフィスビルなどに設置されているスプリンクラーヘッドの周囲に、天井付きの喫煙ブースを設置すると、ブースの屋根が障害となり、ブースの下やその周辺に水が届かなくなる「散水障害」が発生します。
消防法では、スプリンクラーヘッドの中心から半径30cm以内(水平方向)、および散水盤から下方45cm以内(垂直方向)に障害物を設置することは禁止されています。この離隔距離を確保できない場所にブースを設置すると、消防法違反となります。
簡易消火器付きブースの落とし穴
ブースに簡易的な自動消火装置がついていても、必ずしも所轄の消防署が認めるとは限りません。消防署や担当者によって判断が異なるためです。簡易消火装置が「スプリンクラーの代替措置」として認められるケースもあれば、既存のスプリンクラー設備が機能しないとして「設置不可」と判断されるケースもあります。
導入前には、必ず図面や仕様書を持って管轄の消防署へ事前相談に行くことが鉄則です。
スプリンクラーの増設か、別の方法か
消防署から「簡易消火装置では不可」と判断された場合、対策の一つは「スプリンクラーの増設工事」です。ブース内部にもスプリンクラーヘッドを設置することで消防法はクリアできますが、工事費用や原状回復義務などの問題が発生します。
そこで、「ブース設置を諦め、別の方法で喫煙所を作る」というアプローチも検討できます。例えば、天井まで届かない壁(欄間オープンなど)で空間を仕切り、高性能な脱臭機や分煙機を設置する方法です。天井が完全に塞がれていなければ、散水障害とみなされない場合があります。
消防法の壁にぶつかった際は、「喫煙ブース」という手段に固執せず、法令を遵守しながら喫煙環境を実現できる別の方法を提案できる総合力のあるメーカーに相談することが重要です。
屋外喫煙所の設置基準と建築基準法の壁
次に、屋外に喫煙所を設置する場合の基準について詳しく見ていきます。ここでは「建築基準法」が主な判断基準となります。
「建築物」として扱われるライン
屋外に設置する喫煙所が「建築物」とみなされるかどうかが、設置のハードルを大きく左右します。建築基準法において、以下の条件を満たすものは建築物として扱われます。
- 土地に定着していること(基礎があるなど)。
- 屋根及び柱、もしくは壁があること。
つまり、雨風をしのぐために屋根と壁で囲ったしっかりとした喫煙所を作る場合、それはほぼ間違いなく「建築物」です。この場合、役所への建築確認申請が必要となり、防火地域であれば耐火構造にしなければならないなど、多くの規制がかかります。
一方で、屋根がなく、単にパーティションで囲っただけのスペースであれば、工作物や家具扱いとなり、建築確認は不要なケースが一般的です(※高さや規模による)。
消防法で求められる対策
屋外であっても消防法は関係します。特に重要なのが「火気使用設備との距離」や「避難経路の確保」です。
喫煙所は火気を使用する場所であるため、建物の出入口や避難階段の近くに設置して避難の妨げになってはいけません。また、吸い殻が風で飛んで火災になるのを防ぐため、建物の開口部(窓など)から一定の距離を離すことや、周囲に可燃物を置かないことが求められます。
椅子やベンチを設置する場合も、それらが避難の邪魔にならない配置であるか、燃えにくい素材であるかといった点に配慮が必要です。
基準を満たすための設備選びと課題
喫煙所設置の失敗例として、屋内と屋外の基準の混同があります。設置場所と適用される法律を正しく理解することが第一歩です。
屋内設置では、改正健康増進法の基準(入口風速0.2m/s)を満たすために単純に換気扇を強くすると、負圧過多や電気代高騰の弊害が出ます。重要なのは、「効率的な気流制御」です。局所排気システムなどを活用し、必要最小限の風量で基準クリアと省エネを目指します。
設置後も、管理者の責任として安全管理が継続します。法令遵守のためには、清掃やメンテナンスがしやすい設備を選ぶことが重要です。
基準を満たす喫煙所づくりを支えるトルネックス
トルネックスは、分煙対策の専門メーカーとして、法律の規制をクリアしつつ、設置可能な最適解を提案することを得意としています。
消防法の壁を超える総合的な提案力
トルネックスの強みは、単一の製品だけでなく、状況に合わせた多様なソリューションを持っている点です。
- 分煙脱臭ブース(IKBJP):
改正健康増進法の基準(TVOC除去率95%以上)をクリアした、循環型の喫煙ブースです。ダクト工事が不要なため、スプリンクラーの問題さえクリアできれば、最も手軽に完全分煙を実現できます。

- 高性能プラズマ集塵脱臭装置
ここがトルネックスの真骨頂です。もし消防法の関係で「天井付きの喫煙ブース」が設置できない場合でも、空間をパーティションで仕切り、このVFLを設置することで喫煙所を作ることができます。VFLで浄化した空気を室内側に排気することで、擬似的に屋外排気と同じような空気の流れを作り出し、法令基準(0.2m/s)を確保します。これにより、スプリンクラーの増設工事なしで、法令適合した喫煙所を構築可能です。
屋外設置や申請サポート
屋外喫煙所に関しても、建築確認申請のサポートや、建築物扱いにならない仕様の提案など、法規制を熟知したスタッフがアドバイスを行います。
「ウチのビルには何が置けるのか?」「消防署になんて説明すればいいのか?」といった段階から相談に乗れるのが、専門メーカーならではのメリットです。
まとめ
喫煙所の設置基準は、屋内であれば「改正健康増進法の技術的基準」と「消防法の散水障害」、屋外であれば「建築基準法」が大きなポイントとなります。
特に屋内の喫煙ブース設置では、スプリンクラーとの距離(一般的には、水平30cm、垂直45cm)や、管轄消防署への事前確認が必須です。もしブース設置が難しい場合でも、諦める必要はありません。間仕切りと高性能脱臭機を組み合わせるなど、別の手法で法令をクリアする方法があります。
法律は複雑で、建物の状況によって解釈が変わることもあります。「知らなかった」で違法状態にならないよう、計画段階から専門家の知見を取り入れることが成功の鍵です。
「自社のオフィスに設置できるタイプを知りたい」「消防署への説明資料を作ってほしい」など、具体的なご相談はぜひWEB面談をご利用ください。豊富な実績をもとに、法令遵守とコストのバランスが取れた最適なプランをご提案します。
