工場内がなんとなく白く霞んでいる、あるいは床や手すりが常に油でベタついているといった状況は、空気中に浮遊するオイルミスト濃度が高まっているサインです。目に見えないほど微細なオイルミストは、従業員の健康を害するだけでなく、転倒事故や設備の故障、さらには火災の原因にもなり得ます。
しかし、いざ対策を講じようとしても「どの程度の濃度なら安全なのか」「どうやって測ればいいのか」という基準が分からず、後回しにされているケースも少なくありません。本記事では、オイルミスト測定の必要性や判断基準となる数値、測定方法の種類、そして測定結果を改善するための具体的な対策を解説します。
なお、トルネックスではオイルミストの測定業務自体は行っておりませんが、本記事は空気環境改善のための参考情報として、一般的な基準や測定手法をまとめたものです。

なぜオイルミスト測定が必要なのか?放置する3つのリスク
環境測定は単なるチェック作業ではなく、企業の経営リスクを回避するために不可欠なプロセスです。オイルミストを放置することで生じる主なリスクは以下の3点です。
1. 従業員の健康被害と労災リスク
オイルミストを日常的に吸い込むと、鼻や喉、気管支などの呼吸器系に炎症を引き起こす可能性があります。長期間の曝露は、脂質性肺炎といった重篤な疾患を招くリスクが指摘されています。また、皮膚に付着すれば油痤瘡(あぶらニキビ)や皮膚炎の原因となり、従業員の意欲低下や離職につながる恐れもあります。さらに、床に沈着したミストはスリップ事故を引き起こし、骨折などの重大な労働災害に直結します。
2. 設備故障と火災の原因
微細なオイルミストは制御盤のわずかな隙間からも侵入します。内部の基板に付着した油分がホコリを吸着すると、放熱を妨げてショートや熱暴走を招き、高額な設備の故障を引き起こします。また、ダクト内や本体周辺に堆積した油汚れは絶好の燃料となります。加工時の火花がこれらに引火すれば、工場全体を巻き込む火災に発展する危険性があるため、防災の観点からも濃度管理は重要です。
3. 製品品質への悪影響
浮遊するオイルミストは製品や梱包材にも付着します。これにより、塗装工程での「はじき」や、精密部品の汚染による不具合など、品質低下を招くケースがあります。特にクリーンな環境が求められる現場では、わずかなミストも許容されないため、正確な数値把握が求められます。
測定前に知っておきたい管理基準と許容濃度
測定結果を評価するためには、比較対象となる基準値を知る必要があります。主要な学会等が定めている指標は以下の通りです。
日本産業衛生学会の許容濃度
国内の現場で最も一般的に参照されるのが、日本産業衛生学会が提唱する許容濃度です。
鉱物油(ミストとして):3mg/m3
この数値は、従業員が1日8時間、週40時間程度、継続的にその環境で働いても健康に有害な影響が出ないと判断される目安です。
ACGIH(米国産業衛生専門家会議)の基準
国際的な指標として参照されるのが、米国のACGIHが定める基準です。
TLV-TWA:5mg/m3(一部の鉱物油)
世界中の環境測定のベースとなっており、グローバル展開している企業の監査などで参照されることがあります。
法的な位置づけと企業の責任
現在の国内法令において、オイルミストそのものに特化則のような一律の測定義務がない場合でも、労働安全衛生法では事業者に「安全配慮義務」を課しています。従業員が健康被害を訴えた場合、適切な環境管理を怠っていたとみなされれば、企業は厳しい責任を問われます。そのため、自主的な測定と管理がリスクマネジメントとして重要視されています。
オイルミスト管理基準の比較表
| 指標名 | 許容濃度の目安 | 主な対象・備考 |
| 日本産業衛生学会 | 3mg/m3 | 国内で最も一般的な推奨基準 |
| ACGIH(米国) | 5mg/m3 | 国際的な監査等で参照される指標 |
| 労働安全衛生法 | 規定なし | 法令上の義務はないが安全配慮義務が伴う |

主なオイルミスト測定方法と機器
工場内の空気環境を数値化するための主な手法を紹介します。自社で簡易的に行う方法と、専門機関に依頼する方法があります。
デジタル粉塵計(光散乱方式)
現場でリアルタイムに濃度変化を確認できるのがデジタル粉塵計です。空気中にレーザー光を照射し、粒子によって散乱した光の量を計測して濃度に換算します。
メリット:その場ですぐに数値が判明するため、加工条件を変えた際の変化や、対策装置の稼働効果を即座に確認できます。
注意点:粒子の種類によって反射率が変わるため、厳密な絶対量を知るには補正係数が必要になる場合があります。
捕集分析法(質量濃度測定)
一定量の空気をポンプで吸引し、フィルタで粒子を捕集した後、その重量変化を精密な天秤で計測する方法です。
メリット:最も正確な手法であり、公的な報告書や精密なデータが必要な場合に用いられます。
注意点:分析に時間がかかり、通常は外部の環境測定機関へ依頼する必要があります。
簡易的なチェックポイント
測定器がない場合でも、以下の視覚的な確認で危険度を察知できます。
チンダル現象の確認:暗い場所で強力なライトを照射し、光の筋がはっきりと見える場合はミスト濃度が高い証拠です。
視界の霞み:工場の端から反対側を見た際、看板や掲示板が霞んで見える場合は、数mg/m3を超えている可能性が高いと言えます。
測定値が高い場合の改善策:ミストコレクターの見直し
測定の結果、基準値を超えていた場合は、換気や排気計画の改善が必要です。
局所排気の設置とメンテナンス
発生源のすぐ近くでオイルミストを吸い込む「局所排気装置(ミストコレクター)」の設置が最も効果的です。既に設置されている場合でも、フィルタが目詰まりしていると本来の性能を発揮できません。吸引力が落ちている場合は、清掃やフィルタの更新が必要です。
全体換気とプッシュプル換気
局所排気で取りきれないミストについては、工場全体の空気を入れ替える全体換気を行います。新鮮な空気を送り込む(プッシュ)と、汚れた空気を吸い出す(プル)のバランスを整えることで、ミストを作業者の呼吸域から追い出します。
測定後の環境改善ならリドエアートルネックス
測定結果を受けて、確実に数値を下げて環境を改善したい場合に最適なのが、リドエアートルネックスのオイルミストコレクターです。


微細なミストも逃さない電子式集塵フィルタ
一般的なフィルタ式では素通りしてしまうような微細なミストも、電気の力で強制的に帯電・吸着させます。これにより、目に見える煙から微細な油煙まで強力に除去し、環境測定の数値を劇的に改善します。
目詰まりなしで吸引力が持続
物理的なフィルタで遮る構造ではないため、長期間使用しても空気の通り道が塞がれません。導入時の高い吸引力が持続するため、次回の環境測定時にも安定したクリーンな数値を維持できます。
省エネ&メンテナンス委託で運用も安心
リドエアートルネックスの個別設置タイプ「RB600」は空気抵抗が極めて低いため、ファンの消費電力を大幅に抑えられます。また、面倒なフィルタ洗浄などのメンテナンスをメーカーの専門スタッフに委託できるプランもあり、管理担当者の手を煩わせることなく、常に最適な空気環境を保つことが可能です。


リドエアートルネックスの導入事例
大規模工場での労働安全と設備保護
- 導入: 計41台のオイルミストコレクターを集中的に配置。
- 効果: 床のスベリが解消され、作業員の安全性が向上。回収オイルの再利用も可能になりました。また、オイルミストによる業務用エアコンの負荷が軽減され、故障抑制・長寿命化にも貢献しています。



まとめ
オイルミスト測定は、工場の安全性を数値で把握するための重要なステップです。しかし、測定すること自体が目的ではなく、基準値を超えていた場合にどう改善するかが本質です。
数値が悪かった場合は、単なる全体換気だけでなく、発生源で確実にミストを除去できる高性能なミストコレクターの導入や見直しを検討しましょう。従業員が安心して働けるクリーンな職場環境を作ることは、企業の信頼性と生産性の向上に直結します。
まずは現状の空気環境を注視し、気になる点があれば専門的な対策を検討することをおすすめします。
